英語の歴史が物語る!イギリスの言語が「フランス語から英語に変わった」2つの理由が興味深い

イギリスの歴史
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f:id:t-akr125:20161211142909p:plain(18.7.16更新)
イギリスで話される言葉は当然英語!と思っていませんか?

確かにイギリスの公用語は英語ですが、イギリスには英語のほかに、ウェールズ語(ウェールズ)、スコットランド語(スコットランド)、アイルランド語(北アイルランド)があり、いずれも英語とは全く異なるケルト系の言語なのです。

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また、イギリスで広く話されている英語は、北部ドイツから移住したアングロサクソン族が、イングランドで話していた言語が広がったものです。

イギリスの中世では英語が公用語として話されていましたが、英語が公用語でなかった時代もありました。

その理由は、英語の歴史、いやイギリスの歴史が深く影響しているのです。

✅ここまでの内容はこちらの記事も参考に!

>>英語のルーツは?ドイツ語、ラテン語、フランス語の影響について

✅各時代の英語の実際に発音などが知りたい場合はこちら

>>
イギリス英語にはどんな歴史があるの? 中世の英語って理解できる?

英語ではなくフランス語に変わった中世のイギリス

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まずは、英語の歴史を簡単に見てみよう! 5世紀ごろからイングランドにやってきたゲルマン系のアングロサクソン人が話す言語が、長年のうちに変化して英語になったんだ。

👉参考記事

>>イングランドのアングロ・サクソン七王国の概要

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それは1066年に、イングランドはフランスから攻めてきたノルマン人のギョーム2世に、一瞬のうちに征服されてしまったんだ。

ギョーム2世はウィリアム1世としてイングランド王になったんだよ。

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※ノルマン人によるイングランドの征服(1066年)

イギリスの歴史を変えたノルマンコンクエスト(ノルマン征服)の再現

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ウィリアム1世がフランスからやってきたノルマン人ということは、フランス語を母国語としていたんですか?

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その通りだ。ウィリアム1世が戴冠した1066年以降、フランス語は上流階級の言葉で公式の場やイングランドの王室で使われるようになったんだよ。

ラテン語は教会などで使われ、英語は地位を失い農民の言葉となってしまったんだ。

イングランドで英語が再びカムバックした2つの理由

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イングランドを征服したノルマン人は、フランス語にステータスと誇りを感じていたので、約300年くらいはイングランド王室や公式の場ではフランス語が話され続けたんだ。

しかし、14世紀には英語が公式な言語として、再びイングランド王室などで話されるようになったんだよ。

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イングランド王室のノルマン人はフランス語に誇りを感じていたんですよね。なぜ、英語に戻ったんですか?

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英語がイングランドの公用語に戻った理由は大きく2つ挙げられるんだ。

一つ目は、確かにイングランドで英語が公用語となり、公式の場ではフランス語が話されるようになったんだけど、50万人のイングランド人に対して1万人程度のノルマン人だったので、人口では劣勢だったんだ。

次第にノルマン人もイングランド人と混血が進んで同化を始め、彼らの話すフランス語もアングロ‐ノルマンと言ってイングランド訛りになっていったんだ。フランス語を話す誇りやステータスが薄れてきたんだよ。

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黄色の部分が、イングランド(アンジュ―帝国)が12世紀に統治した領土。イングランドだけでなく、フランスにも広大な領土を持っていた。

画像:アンジュー帝国 – Wikipedia

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二つ目は、このようにイングランドの支配階級のノルマン人貴族たちは、フランスとは異なるアングロ‐ノルマンとしての民族意識を持つようになり、本家フランス貴族との間にライバル心が芽生え始めたんだ。

当時のノルマン人たちはイングランドを統治するとともに、フランスにも領土を持っていたんだ。イギリス王ヘンリー2世(フランス語ではアンリ二世)の頃はアンジュー帝国と言って、多くのフランス領土をも統治する大帝国を築いていたんだ。

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わああ、すごい広い領土ですね。でもフランスにはフランス王がいたんですよね?

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次第にイングランド化するノルマン人とフランス王の間で対立が起こり、
いわゆるイングランドとフランスとの100年戦争が起こったんだ。

そうこうしているうちに、イングランドではフランス語を話すことが「フランスのイングランド侵略、イングランドの破壊につながる」と言われ初めるようになり、ノルマン人の英語化が進んでいったんだ。

イギリスとフランスの100年戦争の分かりやすい概要 

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そしてついにエドワード3世の1363年よりイングランドの公式の場で英語が使われるようになり、ヘンリー4世の1399年以降にイングランド王室でも英語を言語として用いるようになったんだよ。

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※ヘンリー4世

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イングランドでは最初は英語が話され、ノルマン人の侵略によってフランス語が公用語になったんだけど、ノルマン人がフランスと対立し、再び英語が公用語として話されるようになった、ということですね。

英語の歴史と、実際の歴史とのかかわりが、とても興味深いです。
イングランドでは英語も歴史なしでは語れず、ますます歴史に興味を持ちますね。

イングランドの英語に影響を及ぼしたフランス語

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約300年ほどイングランドではフランス語が公用語として話されていたので、多くのフランス語が英語に取り入れられています。

例えばprince, duke, judge, court, tax, money などがあります。

アングロサクソンの英語(古英語)にノルマン人がもたらした英語(中英語)の違いが分かる例を挙げてみましょう。

・羊:古英語ではSheep、中英語ではMutton

・牛:古英語ではCow、 中英語ではBeef

・豚:古英語ではSwine、中英語ではPork

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古英語では直接的な動物の名前が作られ、中英語では料理に使われる肉の名前になっている点が面白いですね。

その他にも、こんな英語がフランス語から取り入れられています。

・restaurant(レストラン)
・cruisine(料理)
・souvenir(お土産)

・religion(宗教)
・routine(ルーチン、慣習)
・divorce(離婚)
・rose(ローズ、ばら)
・genre(ジャンル)

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こうやってみると、料理に関するものや、人間関係や花など、いかにもフランスらしいことばが英語に取り入れられていますし、日本語にも取り入れられていて、とても興味深いですね。

おまけ:当時の英語を聞いてみよう

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英語のタイムスリップですね。やってみましょう!

興味深いのは、フランス語の影響を受けない、1066年前の英語は殆ど理解不能です(古英語と言います)。

しかし、その後フランス語を取り入れたりして行くうちに、だんだん分かるようになっていきます。(中英語~)

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コメント

  1. nezuzyouzi より:

    言葉にも歴史があるんですね。
    中英語では
    羊はmutton。
    牛は、beef。
    豚はporkという単語になるのですか。
    食べ物の名前ですね。おいしそうです。
    イギリスの歴史ストーリーを作るんですか楽しみです。^^

  2. lacrime より:

    いくつかこの記事には看過しがたい点が見られるので指摘させていただきます。
    第一に、『イギリスの言語が「フランス語から英語に変わった」』というのは不適切です。『イギリスの公用語がフランス語に一時的になったものの、再び英語に取って代わられた』と書くべきです。
    次に、ケルト語派のスコットランドで話されている言語は「スコットランド語」ではなく、「スコットランド・ゲール語」と表記する方が良いです。なぜならば、スコットランド語という表記はスコットランド英語を指すこともあるからです。*1
    また、「イギリスで公用語として話されている英語は、従来イングランドの言語」と書かれてありますが、これも正確さを欠いています。正しくは、「イングランドへ移住したアングロ・サクソン人によってもたらされ、長きにわたり用いられてきた言語」*2です。あくまでケルト系の人々がブリテン島の先住民族であり、古英語、又の名をアングロ・サクソン語と呼ばれる言語を話していたのは、アングロ・サクソン人です。付け加えて言うと、「イギリスにやってきたドイツ系のアングロサクソン人」というのも正確ではありません。「ドイツ系」ではなく、「ゲルマン系」とするべきです。アングロ・サクソン人を含むゲルマン人はドイツ北部からスカンディナヴィア半島南部にかけて住んでいた人々*3なので、ドイツ系というのは不正確です。
    さらに、「イギリスのイングランドで話される言葉も現在でこそ英語ですが、そうでない時期もありました」というのは誤解を招きかねません。その後に「英語は地位を失い農民の言葉となっ」たと書かれているように、話されなくなったわけではなく、威信を失っただけです。*4「話される言葉」ではなく、「公用語」あるいは「威信のある言語」とすべきでしょう。あるいは、「話される言葉」の前に、「王室や貴族によって」と付け加えるべきでしょう。*5
    さらに、「イギリスでは言語も歴史なしでは語れず」とありますが、いかなる言語でも同様です。イギリスに限った話ではありません。例えば、日本語などでも方言を考える際に歴史的に見ることはよくあり、有名な仮説に方言周圏論*6というのがあります。
    最後に一点。「・羊は、古英語ではSheep、中英語ではMutton」などというのはあまりにも酷い表現です。例えば、本来語の方、すなわち現在動物の方を指して用いられる方の羊(sheep)を、古英語、中英語、現代英語の順で表記すると、scēap>sheep>sheepとなります*7。言語の歴史を述べる内容であるにもかかわらず、その言語における単語の綴りの変遷を無視するのは横暴としか言えません。また、現代英語のmuttonは中英語ではなく、「中英語期にフランス語より借用した語」*8です。ですから、「古英語では直接的な動物の名前が作られ、中英語では料理に使われる肉の名前になっている」のではなく、「英語で本来用いられていた語(古英語期より用いられてきた語)が動物そのものや民衆の飼っていた家畜を指し、フランス語からの借用語が食肉を指すという使い分けがなされるようになった」*9のです。さらに、ドイツ語や一昔前のデンマーク語などとは異なり、英語では基本的に普通名詞は語頭を小文字で表記するので、sheep, muttonのように書くべきです。つまり、古英語期以降用いられている英語本来語を古英語、主に中英語期にフランス語などから借用された語を中英語と呼ぶのは不適切であるということです。
    記事を読者にわかりやすいように書かれることに関しては素晴らしいことではありますが、そのためかあまりにも不正確な表現が散見されます。記事を書かれる際には慎重に書かれることをお勧めいたします。この記事によって誤解をしてしまう読者が現れかねないことが残念でなりません。
    *1 https://en.wikipedia.org/wiki/Scottish_Gaelic においても、‘Not to be confused with Scots language.’ との注意書きがあります。
    *2 寺澤盾(2008)『英語の歴史』中公新書(20〜21ページ)
    *3 京大西洋史編纂委員会編(1983)『新編 西洋史辞典』東京創元社 「ゲルマン人」
    *4 市河三喜・松浪有(1986)『古英語・中英語の初歩』研究社(129ページ)
    *5 児馬修(1996)『ファンダメンタル英語史』ひつじ書房(70〜71ページ)
    *6 探偵ナイトスクープの企画で「アホ・バカ分布図」を作るというものがあり、これによりこの説の認知度が高まりました。
    *7 https://en.wiktionary.org/wiki/sheep に ‘From Middle English sheep, scheep, schep, schepe, from Old English scēap’ という記載があります。中英語期における単語の綴りは特に前述のように非常に多様なので、ここでは ‘sheep’ に代表させました。
    *8 小島義郎・岸暁・増田秀夫・高野嘉明編(2010)『英語語義語源辞典』三省堂 の ‘mutton’ ところに、「中世ラテン語 multo (=sheep) が古フランス語 moton (=ram; wether) を経て中英語に入った.」とあります。
    *9 松浪有編(1995)『<テイクオフ英語学シリーズ> ①英語の歴史』大修館書店(80〜81ページ)には、次のような記述があります。「サー・ウォルター・スコット (Sir Walter Scott) の『アイヴァンホー (Ivanhoe) 』の一節に有名なように,動物名の本来語 ox, sheep, swine, calf, boar, deerに対し,料理に具する肉としてのフランス語 beef, mutton, pork, veal, brawn, venison のように,用途の相違で完全な分化を果たした例もある。」これとほぼ同様のことが児馬(1996)の71ページでも言及されています。

  3. t-akr125 より:

    id:nezuzyouzi さん
    コメントありがとうございます!またよろしくお願いいたします!!
    id:lacrimeさん
    大変詳しくご丁寧な説明ありがとうございます!!皆さまのご理解の助けになりとても感謝しております!

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