イギリス・ウェールズの歴史ーカムログ

ウェールズ語ではウェールズの事をカムリ(仲間)と言います。ウェールズの歴史と、ウェールズとの関わりが深いアーサー王についてのページです

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ロンドン塔を見上げてため息をつく理由

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「俺はちょっと後悔している、いや大いに後悔している」

「何をだって?」

「食べ過ぎだよ、食べ過ぎ」
「運動もしてなかったもんだから、太り過ぎて、それが原因でヘマをやらかしてしまった。お笑いだよ。恥ずかしい」

俺はグリフィズと言って13世紀に生きた貴族さ。いい名前だろ。そうさそのはず、由緒あるウェールズ王家の名前だぜ。俺は王様になるはずだった、なるべきだった。だけど、牢獄にいたんだ。そう、有名な「ロンドン塔」にね。

 

お前は悪人か? 何をやったんだ、と思うだろう。王が悪事をはたいても罪にはならない時代だぞ、王が法律だからな。


だけど俺の場合は何もやっちゃあいないんだ。ただ食って寝て生きていただけさ。
なのに捕まって投獄されたんだ。不条理だろう。

 

誰が俺を投獄したのか?

それは俺の兄ダヴィッズさ。奴こそが悪人だよ。俺は生きていただけだぜ。それも、ウェールズ生粋の王家の血筋さ。ダヴィッドはな、父は同じだけど母は違って、奴はウェールズイングランドとのハーフだ。それもその母がイングランドのジョン王の娘ときたから、タチが悪い。奴ら結託してウェールズを乗っ取ろうと考えてやがった。

人の欲とは恐ろしいもんだね。ああ、いやな世の中になったもんだ。

本来ならウェールズの王になる俺を捕らえて牢にぶち込み、ダヴィッズがウェールズの王になろうとしたんだ。初代のプリンス・オブ・ウェールズだぞ。
俺はブチ切れたね。見てくれこの体、身長2メートル、体重120キロさ、いや食べ過ぎたので今は150キロさ、立派だろう。思う存分暴れてやったさ。
でも、大勢に取り囲まれて捕まり、運ばれたのが、このロンドン塔さ。

俺は何も悪いことはやって無いんだよ。ただ生きていただけさ。だけど、俺の由緒正しい血が奴らには邪魔だったんだ。俺が生きていることが、奴らからすると罪にしたいって訳だ。俺は悪いことはやってないので殺す訳にいかず、投獄されているんだ。恐らくずっとな。

でも、もうどうでもいいんだ。俺には地位の欲はないからね。ダヴィッズが王でも誰が王でも、俺には興味ないね。
ここにいると、イングランドにしちゃあマシな料理を出してくれるから有難いよ。食っちゃ寝る食っちゃ寝るの生活さ。ただ生きているだけだよ。何も変わっちゃいない。
変わったのは、運動もせず食べ過ぎて、こんなに太ってしまったくらいだ。いやあ人は食べたら動かないとダメだね。本当に後悔したよ。

俺は国に残した家族もいるんで、様子を見に行こうと、たまには下界で暴れて存在をアピールしようと、つかの間の脱獄を試みたんだ。

 

ここは高いロンドン塔だ。どうやって脱獄したかって?
ロンドン塔を見てみろよ。

 

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分かるかい?
おっ、勘ががいいねえ。そうさ、そうだよ。
窓があるんだ。窓から脱獄を試みたんだ。

 

道具は何も持っちゃいないけど、この俺でも考えついた方法さ。
やり方は簡単だ。

シーツとカーテンを結んで長い縄みたいなものを作ったんだ。そして窓から垂らして、それを使って降りよう、ってわけだ。

俺はみなが夜寝静まってから、作戦を決行したわけだ。
俺は計画通りに、窓からお手製の縄をつたってゆっくりと降りて行ったんだ。

 

ここまではシナリオ通りに完璧さ。
ロンドンの街も、テムズ川も、いつも牢獄から見るのと違って美しく見えたよ。みな俺を応援しているようにさえ感じた。テムズ川から吹き上げてくる真冬の冷たい風も、この時は神の祝福に感じたね。

 

しかし、この風がいけなかった。
いや正直に言うと、俺の怠惰な体が原因だった。
風がちょっと強く吹いたときに、運動不足で巨漢の俺はバランスを崩したんだ。
壁から足が離れ、縄に俺の全体重がかかったんだ。

あっ!!

 

縄が俺の体重を支えることが出来ずに、結び目がほどけてしまって、
俺は、俺は、頭から真っ逆さまになって、地面に向かっていったんだ。

 

これでジエンドさ。俺は地面に強く打ちつけられた。
そして、こうして今ここにいるんだ。別の姿になってね。

 

食べ過ぎて、運動もしなかったので体重が増えすぎたことが大きな原因だった。
ロンドン塔を見上げるたびに、ため息をつきながら俺はこう思うんだ。

食べるだけで運動しなかったら、ぶくぶく太って後から後悔するって。
たくさん食べたら、運動しなきゃ、てね。

 

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追伸:

邪魔者がいなくなったので、俺の兄のダヴィッズは安心してプリンス・オブ・ウェールズの座についたんだ。ま、その後、俺の息子が奪ったけどね。

 

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以上の物語は、たなかあきらの創作ストーリーです。

 

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