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イギリス・ウェールズの歴史ーカムログ

ウェールズ語ではウェールズの事をカムリ(仲間)と言います。歴史深いウェールズに触れて下されば嬉しいです

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「思い出のケイタイ」は「ケイタイの思い出」となった

エッセー、詩

特別お題「おもいでのケータイ」

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「ハロー」
「ハロー」
 
相手は電話に出た。
「ハロー、あきらだよな?」
 
どうも様子がおかしい。と、友人は思ったそうだ。
声の調子がいつもと違う。
あきらはひどい風邪でも引いたのだろうか?
それにしても発音が変だ。
すごい巻き舌になっている。
いつの間にそんなすごい英語を身につけたのだろうか?
 
「あきらって誰だ?」
 
僕の「思い出のケイタイ」は、「ケイタイの思い出」となっている。
今思うと、とても化石的なケイタイであった。
 
 
そのケイタイとの出会いは約十数年前に、ウェールズの首都にある大学に行き始めた時のことである。
当時はまだスマホは無かった頃で、日本でも今の様に誰しもがケイタイを持っている時ではなかった。僕もケイタイを率先して持ってはおらず、ウェールズでも持たないつもりだった。
 
そうは言っても、住んでいたアパートには固定電話もないし、ネット環境も整っていない。
いざと言う時の用心もあって、買おうと決心してケイタイショップに出かけた。
 
こんな感じであまりケイタイを使うつもりがなかったので、ちょっと遊び心を入れて何か変わったケイタイにしよう、そう考えた。
 
店で見ていると、色んなケイタイがズラリと並んでいる。
眺めていて感じたのは日本のケイタイより、よく言えばシンプルでスタイリッシュ、悪く言えばアプリなどの機能が少なく時代遅れを感じた。
 
よし、今の日本で買えそうもない、一番機能が低そうで最も安いケイタイにしよう。
おぉ、これは化石的なケイタイだ。日本でも見ることにない古臭さだ。
見つけた、ウェールズで発掘したぞ。
ということで早速購入をした。
 
 
こんな感じ、いやもっと古さを感じたと思う。
それはNokia製のケイタイで、通話とショートメールのみの機能で、画面は白黒で粗いドット表示のみだ。
 
 
ふふふ、これは貴重なケイタイを手に入れたぞ。
これを1年後、標本として日本に持って帰り、みんなに見せよう。
僕はウェールズでタイムスリップしてきたぞ、とね。
 

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このようにケイタイの機能に何の期待もしていなかったが、ウェールズで大活躍してしまった。
僕もだんだんとウェールズの生活にも慣れ、友達が増えていった。
そして始めはそんなに使わないつもりであったが、ケイタイが大いに働き始めた。
 
「今日は、マーティンの家で飲もうか。よし18時に行くよ」
「明日は、例のパブで飲みながらサッカー観戦だ」
「明後日はウチに来いよ。皆んなで酒を持ち寄ってパーティーだ」
 
毎日毎日、飲んだくれた。
ケイタイは飲んだくれるための連絡係となったのである。
 
白黒液晶画面にドリンクと打ち込まれた文字列が、ケイタイから友達へと発信される。
するとその情報は拡散され、増幅され、ケイタイに舞い戻ってくる。
なんと、素晴らしい。
僕は酒を両手に、ウキウキと友人宅に向かえるのだ。
今度は何処で飲もうか、まだかまだかと友達からのメッセージや電話を待ち、ケイタイの画面を何度も何度も見つめていた。
 
ウェールズにいる間、僕はこのケイタイをいつも携帯し、使い込んだ。
電話であるが切っても切れない関係になっていった。
 

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「ヤオ、今日はどこに行こうか」
「そうだな、シティーロードのパブに行こうか」
 
カーディフ大学の研究室で知り合った中国人のヤオとも頻繁に飲みに行っていた。
 
ある日のことだ。ヤオは用事があってロンドンに行った。
僕は日本に帰る日が翌週に迫っており、最後にロンドンの郊外にあるウィンザー城に観光に行った。
そして連絡を取り合い、ロンドンで飲もうということになった。
 
「ハロー」
「ハロー」
 
待ち合わせを決めようとヤオは僕に電話を掛けたそうだ。
相手は電話に出た。が、声色が全然違う。
すごい巻き舌英語であったらしい。
 
「ハロー、あきらだよな?」
「あきらって誰だ?」
 
ヤオから聞いたが、僕のケイタイに出たのは恐らくイラン系の男であったらしい。
 
僕はウィンザー城の最寄の駅まで移動する電車の中で、
ポトリとケイタイを落としそのまま降りてしまったらしい。
そして、イラン系の男が拾って使っていたようだった。
 
残念ながら、ロンドンでヤオと会って飲むことはできなかった。
 
残念ながら、化石的なケイタイを日本に標本として持って帰ることも
出来なかった。
 
僕の「思い出のケイタイ」は、「ケイタイの思い出」となった。 
ウェールズで一年間大活躍してくれたケイタイとの楽しい思い出が残った。
 

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