こんにちは。ウェールズ歴史研究家のたなかあきらです。
久しぶりにウェールズ歴史の争いについて記事を書きます。このウェールズの歴史上の争乱はシリーズで分かりやすくお伝えしていきたいと思います。
では早速、今回の話に移りましょう。10世紀に、統一されたウェールズが脆くも分裂して子、孫、ひ孫まで戦いを続けていくお話です。
乱世のウェールズで和平は成立するのでしょうか?
※この話の概略の流れは歴史に沿っていますが、登場人物像などは僕の想像がかなり入っているフィクションです。
<登場人物>
ウェールズの歴史にやたらと詳しいワタル。寡黙であるが歴史になると話が止まらなくなる。
歴史に詳しくないアサオ。心は優しいが、かなり小心者。
語り手のジェイムス。
前回までのあらすじ
前回は10世紀中ごろで、ウェールズも三国に分かれて戦いを続けましたが、ヒウェルという王が現れてようやく戦乱に終止符を打ち、法を作って国家の安定に力を尽くした、という内容でした。
ほんとに兄弟間の争いが孫にまで及んで・・・・・・心が悲しくなりました。
それが戦乱時代っていうもんだよ。平和な世の中を望むが、自分が戦乱の世を制して平和にしたい、という思いが強いな。そんな奴らが、どんどん現れるんだ。
ということは、また戦争が始まるってことですか?
再び分裂して戦乱の世の中になった理由
ヒウェルの世の中は8年ほどしか続かなかったんだ。ヒウェルも年になり950年に亡くなったんだ。何が起こったと思う?
ん~そうですね。これまでの流れからすると争いが子から孫へと継がれていたので、ヒウェルに負けたイドワルの息子たちが奪い返しに行ったのかなと思いますが・・あってます?
その通り。君もウェールズの歴史に慣れてきたな。
ウェールズの南西部の拠点を持つヒウェルは、イドワルの領土であるグウィネズ(Gwynedd)を占領したんだったな。
ヒウェルの没後に、イドワルの息子イアゴとイエウヴがグウィネズ国の奪回を図ったんだ。
もちろん、ヒウェルにも息子がいたんですよね。
もちろん。3人の息子がいて、オウァインが中心的存在だったんだ。
ちょっとここで登場する人物を整理しておきましょう。今回新たに登場するのはこの4人です。
イドワルの息子イアゴ
イアゴの弟イエウヴ
ヒウェルの息子オウァイン
オウァインの息子エイニオン
分かりやすいように家系図も追加しておきました。では続きをどうぞ!
イアゴとイエウヴ兄弟は協力して、オウァイン兄弟のいるグウィネズに攻め込んで領土を取り戻したんだ。不意をつかれて防戦一方になってしまったのか、オウァイン兄弟たちは後退を続けたんだ。
勢いにのったイアゴとイエウヴは、オウァインたちの領土であるデハイバース(上の地図中でSeisyllwgとDyfedの領土)にまで攻め入ったんだ。
やったぜ!とうとう親父の雪辱を果たせたぞ!
やったぜ兄き!!このまま奴らの領土まで奪ってやろうか!
さらにつづけるぞ!このままやられ続けている訳にもいかないオウァイン兄弟たちは、軍備を補強して反撃に転じたんだ。イアゴ兄弟軍を押し戻して、グウィネズ領土内まで再び達したんだよ。
自領内に後退したイアゴとイエウヴは奮闘して、再びオウァイン兄弟を退却させたんだ。
戦乱のシーソーゲーム。その後どうなった?
その次はどうしたと思う?
どうせ、またオウァイン兄弟が反撃したんでしょう?
こんなやり取りがあったのでは?筆者の推測です。
兄貴、オウァインの奴らまた反撃してきまっせ!
このまま戦いを続けても埒があかんな。話し合うとするか。
オウァイン殿、われらは曾祖父を同じくする親類ではないか。親類同士戦っても何の益もない。オウァイン殿は南のデハイバースを治め、ワシとイエウヴはグウィネズと元のさやに戻らないか?
ううむ。確かにイアゴ殿の言う通りだ。ここで休戦協定を結ぼう。
お互いは戦わず別々の道を進み、万が一ピンチに立たされたときは協力し合おう。
シェイクハンズ!
という訳で、とりあえずは賢明な策をとった訳だな。
よかった~戦ってたらお互い潰しあいになっちゃいますもんね。
ただ、とりあえずって言葉が気になりますね。
戦乱の世の中であることを忘れちゃだめだよ。平和が続くと欲望がたまってきて奪いたくなってくるんだよ。人間って言うのはな、そんな生き物さ。
止まったシーソーは再び動き出すのだろうか?
またか!と思われるかもしれませんが、これがこの時代の世の常なんですね。
こんな陰謀が始まっていました。
兄貴~、もうちょっと俺にも領土くれないかな~
お金だって足りないよう。くれないとすねちゃうぞ!
黙れ黙れ!どれだけ渡したら気が済むんだ。
親父の奴、甘やかして育てすぎたな。厄介な野郎だ。
一方
親父、親父、イアゴの奴らはほっといて、南西部攻めましょう。
そうそう、この地図のピンク色の場所ですよ。北部よりも気候が良くて農場広いし、年貢もたくさん取れますよ。
エイニオン、なかなか良いところに目を付けたな。お前の言う通りだ。
という訳で、不運な動きがウェールズの中で起き始めていました。
次回に続きます。
最後にたなかあきらコメント
今回の話はいかがでしたでしょうか?
ウェールズを統一して法律を定め平和な世の中になった、と誰もが思った矢先に戦乱の世の中に逆戻りしてしまった、という内容でした。
奪ったら奪い返す、奪ったらさらに広げてやろう、今回登場した4名も少なからずその思いがあったようです。
先のヒウェル王は侵略戦争もしましたが、国内やイングランドとも和平を結び、ウェールズもなかなかやるじゃん、と思わせた王でした。
まだこの時代ではこのような和平を重んじる人材は100年に一人くらいしか出ていないようです。
次に和平によりウェールズを平和にする人物はいつ出るのでしょうか?
※今回の話の原作はこの記事の前半部分です。
ウェールズの歴史やウェールズ自体については、合わせてこの記事も参考にご覧ください。
最後まで読んでくださり有難うございました。
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