こんにちは。たなかあきらです。
中世ウェールズの歴史をもとに、ストーリーを書きました
このストーリーをもとに漫画にできたらなあ、と思います。
※時代背景
第一話
ほほほっ。ウェールズに攻めようと舟に乗り込んでいたヴァイキングがいたので、全滅させてやったわ。その舟を奪ってウェールズに乗り込んだ、わけ。
ロドリ大王さんは、きっと私たちをヴァイキングと思ったのよね
やはりお前たちの仕業か
それでね、最初はヴァイキングみたいに、チョット略奪をして帰ろうと思ったのよ。でも辺りにいた音を締めあげたら、ロドリ大王が近くに居るって言うじゃない。これは絶好のチャンスと思って、先まわりして待ち伏せしてたのよね。
ふふふふっ
ウェールズの天候はとても変わりやすい。先ほどまでは、晴れていたが、急に雲が広がり、雨が降り始めた
いやだわ、化粧が落ちちゃうじゃないの。さっさと済ませましょ。あとは、お前たち、まかせたわよ
エセルレッドはくるりと背を向けて、マーシア軍の中に姿を見を消した。ばらばらばらっと、剣を抜いたマーシアの兵たちが辺りを取り囲んだ。
むむむ、無念。我が息子たちよ、我がウェールズよ!
バラバラか結束か
何!親父がマーシアにやられただと。
感情も起伏も激しい男だ。涙しながら倒れこみ、立ち上がったかと思うと、じだんだを踏んだ。
アナラウドは真っ赤になり、憤慨して叫んだ。
くそ!マーシアの奴め。ぐずぐずしている暇はない!すぐに兵を集めてマーシアに攻め込むべきだ! 親父の無念を晴らして、奴らの領土も奪ってやる!行くぞ、者ども!
アナラウドの熱さに水を注ぐかのように、カデルが冷静な顔をして静かに呟いた。
兄貴、落ち着けよ。感情に任せて、マーシアに攻め入るのは、まだ時は早い。それよりウェールズの混乱を鎮めて戦力を十分に蓄えることが先決だよ。それからでも遅くはあるまい。
カデルお前、何をのんきなことを言ってるんだ! 今だよ今! お前、自分の父親がやられたのに、黙っているのか。けしからん、なんと薄情な奴だ
兄貴、俺は仇をとらないなんて一言もいってない。相手が強敵マーシアだけに、軽率に動いては奴らの思うツボだ。仇どころか、俺たちまでやられてしまう。勝てる準備をしっかりして、奴らを潰そうではないか。そうだろう、兄貴。何か間違っているか?
うぬぬぬ。
アナラウド兄上、今は僕も戦いに賛成しないよ。多分、マーシアは僕たちをおびき出して、全滅させようと狙っているよ
くそっ。カデルの野郎、親父みたいな口をききやがって。誰がリーダーだと思っているんだ。どいつもこいつも、ふ抜けた野郎だ!ちえっ、勝手にしろ。
しかしだ。すぐに戦える準備をしておけよ! いいか、少しでも敵が動いたらすぐに攻め込むぞ!
リベンジ
直ぐに、ウェールズ軍が攻めてくると予測していた者もいたが、四年の月日があっという間に流れた。
あーあ、待ちくたびれちゃったわ。もう何年待たせるのよ。こんなウェールズの皆さんは腰抜けだとは思わなかったわ。来ないなら、こっちから行くわよ。
881年、ウェールズが動かない事に痺れを切らしたマーシアのエセルレッドが、大軍を率いて北ウェールズのグウィネズに攻め込んできた。
「アナラウド様、マーシアの大軍が、大軍が攻め込んできました!」
とうとう来やがったかエセルレッド。四年もの間、じっくりと準備していたぜ。おい、カデルにメルヴァン。奴らが動いた、もう戦わないとは言わせないぞ
熱くなるアナラウドとは対照的に、カデルはじっと目をつむったまま、腕組みをしていた
おい、カデル!
アナラウドが表情一つ変えないカデルに耐えきれず、カデルに詰め寄った。カデルは何か物を言いたげであったが、短い言葉で返した。
約束は約束だ。分かっているさ
うむ、よし行くぞ。ウェールズの三兄弟王が力を合わせて仇を必ず取って、親父の無念を晴らしてやる!弟たちよ、すぐに出陣だ!!
分かったよアナラウド兄上。今が、仇を討つチャンスだと思うよ。2人とも、仲違いしないようにして下さいよ。内輪揉めでもしたら、マーシアにやられちゃうよ
出陣
ウェールズは雨が多く、一日のうちに6度も天気が変わると言われているように、突然雨が降ってくることは日常茶飯事である
雨がふると枯れていた川にも流れが戻る。小さな川の流れは弱い。しかし弱い力であっても、幾つかの川が流れ込み、せき止められると氾濫を起こし、大きな力に豹変することもある
881年、アナラウド、カデル、メルヴァンのウェールズ連合軍は、侵入してきたエセルレッド率いるマーシア軍との戦うため、北ウェールズを東に向けて進軍していた。
なかなか雨が止まないな。うっとうしい限りだぜ。さっさと戦って、済ませようぜ。
カラダがベタベタで、足も重いし、武器も重く感じますよ
だらしねえなあ、お前は。さっさと進めよ
あんまり急かさないでくださいよ~💦
この雨じゃ敵もどこかで陣営を張って休むだろう。我々もどこか場所を見つけて待機をして、敵の動きを探った方が良さそうだ
そこへ、目立たぬ格好をした斥候にでていた男が、息を切らしてささっと戻ってきた
「どうやらマーシア軍は、コンウィー川を渡り川沿いに南下しているようです。そこでキャンプを張ると見受けられます」
そうか。やはり、ぐずぐすしている暇はない。今が、チャンスだ!待機はやめて、すぐに攻撃を仕掛けて、マーシアの奴らをぶっ潰そう!
威勢良くアナラウドは立ち上がった。ところが、カデルは座ったままで、動こうとしない。腕を組んだまま目を閉じて、いつものように考え事をしているようだった。
待てよ兄貴。今仕掛けても効果は薄い。しっかり作戦を練った方が良いだろう。おい、そこの男。マーシア軍はどのくらいの軍勢だ?
「はい、総勢2万と見られ、一箇所に固まっているようです」
2万!敵は2万もいるのか?
アナラウドは驚きを隠せなかった。
我々は5千しかいない。敵が休んでいる今、仕掛けるのがチャンスだ
いや、夜になって敵が油断したところを、急襲を仕掛けるのが良いだろう。
何をいっているのだ。じれったいやつだ。先手必勝だろう。雨が降っていて軍が乱れている今、急襲しないと勝てないぞ。雨が止んで、敵が動き出したらどうするんだ
兄さんたち、言い争いはやめてくださいよ。カデル、僕も今攻めた方が良いと思いますけど。
ふん、そうだろう。メルヴァンもそう言っているんだ。カデル、行くぞ!
いや、待てよ。もっと、理にかなった攻め方を考えろよ。敵のいる地形をよく見てみろよ。
カデルは、起伏のない声で説明を始めた。
待機
その頃、マーシア軍のエセルレッドは降り続く雨にいらだっていた。
もう嫌だわ、この雨。せっかくの鎧かぶとも台無しじゃない。あ〜あ、お気に入りの香水も、すっかり流れちゃった。もういや!
エセルレッドは吐き捨てるように怒りをぶつけ、ぶるると、身震いをした
おや、あすこいいわねえ。川沿いの少し先に、ひらけた場所があるわ。そこで待機よ、待機! 川も山もあるから、ウェールズの奴らも攻めてこれないわ。
2万のマーシア軍は、川を背にしてテントを張り、夜を過ごすことにした
明日は忙しいわよ。コンウィ川から西に進むと、ウェールズの奴らの本拠地が近いわ。大暴れしてやりましょう。今晩はこんな雨だから、明日に備えしっかり休むことね
カデルは、静かに説明を続けていた。
奴らは大軍だ。いったんキャンプを張ったら、直ぐには動けないはずだ。雨の中を動いて疲れているだろうし、日も傾いているこの時刻なら、きっと夜を過ごすだろう。夜がチャンスだ。
なるほど、カデルの作戦は、筋が通っていますね。うまく行くかもしれません。アナラウド、夜襲に変更しましょう
メルヴァンは意見を覆して、カデルの側に立った。
なんだとメルヴァン
違うよ、アナラウド。僕も気がつかないところがあったんですよ。カデルのいう通りと思います。
ちぇっ。どいつもこいつも、俺に意見しやがる。誰が指揮官だと思っているんだ。勝手にしろ!
アナラウドは怒ってコップを投げつけ、そのまま、テントからドスドスと出て行った。
アナラウド、待ってよ。アナラウド!
まあ、放っておけメルヴァン。アナラウドも作戦が分かっているから、気が変わるだろうよ。
夜襲
夜も深まり、激しかった雨も上がり、辺りは静かになった。マーシア軍もウェールズ軍も静かになった。皆寝静まったのだろうか。いや、相手の動きを警戒しながら、潜んでいる者もいたかも知れない。
なに、なんの音?
ただならぬ気配を感じ、エセルレッドは飛び起きた
矢よ、矢よ。ウェールズの奴らが攻めてきたわ。皆のもの、起きて戦うわよ
テントを跳ねのけ、マーシア軍は一気に飛び出し、矢が飛んでくる方向へ、突進した
マーシア軍をなめたらダメよ。夜襲はお見通しよ、戦いの準備していたわよ、
ホホホ
百戦錬磨のマーシア軍の激しい攻撃に、ウェールズ軍も応戦したが、数では圧倒されている。ウェールズ軍はジリジリと後退しはじめた。
ホホホ、手ごたえがないわねえ。さあ、狭い場所に追い込んだわよ。一気にひねり潰しておやりなさい!ホホホ
メルヴァン率いるウェールズ軍はなす全てがなく、川と山の間隔が狭くなっている場所に下がって行った。
くうっ、さすがマーシア軍。僕のかなう相手じゃなかった・・・でも、何とかもう少し、凌がないと・・・
その時だ。ウォーと言う雄叫びと共に、山の上から何かが降ってきた。マーシア軍めがけて、突進してきたのである。
「エセルレッド、覚悟!」
狭い谷間に入っていたマーシア軍は身動きが取れない。マーシア軍は混乱し、浮き足立った。
なに、なにが起きたの? あっ、まさか。しまった、ウェールズ軍にはめられたわ
カデルは、戦いが始まる前に、コンウィー川沿いにキャンプを張ったマーシア軍を見下ろしながら背後の岩山に登り、チャンスをうかがっていたのである。
いけないわ。全軍退却よ! テントを張った広い場所に戻るわよ
マーシア軍は、ウェールズとの交戦をやめて、クルリと向きを変えた
「そうはさせるか、追え、追うんだ」
カデル軍にメルヴァン軍も加わり、更に激しい攻撃を加えた。ロングボウで射られる者、増水した川に逃げ溺れる者、マーシア軍はチリジリになって広場にかけ混んだ
さすがのエセルレッドも、ウェールズの奇襲攻撃には肝を冷さねば、ならなかった。それが気に入らなかったのか、エセルレッドは大いに怒り、鬼の様な形相に変わっていた。もはや、ピカピカの鎧かぶとや、自分の顔身なりを気にする余裕は失われたようだった。
くそっ、ウェールズの奴ら、いい気になりやがって。マーシア軍の恐ろしさを思い知らせてやるわ。得意の楔型陣形で玉砕よ。皆殺しにしてくれるわ
エセルレッドが突撃をしようとした時、大きな雄たけびが辺りに響いた
待っていたぜ、エセルレッドの野郎。これで、仕上げだ!!
何、この匂い。まさか、これは・・・ぎゃー
カデルとメルヴァンのウェールズ軍に追われて、広場に舞い戻ったマーシア軍めがけて、待機していたアナラウドの兵が火矢を放った。メルヴァン率いるウェールズ軍におびき出され、カデルに急襲を受けている間に、アナラウドの兵達がテントを張った広場に可燃物とオイルがたっぷりとまいていたのだ。
カデルの策略にはまったマーシアの大軍は、少数のウェールズ軍に大敗し壊滅した。
三兄弟は父ロドリ大王の仇を打ち、無念を晴らすことができたのである。
人々はこのウェールズの勝利を「神のロドリ大王への復讐」と呼んだ。
雨が降った後だからな。うまく火がつくか、心配だったぜ。それにしてもよく燃えてくれたわ
アナラウドはホッとため息をついた。
カデルの策は見事にハマりましたね。さすがです
いや、たまたま運が良かっただけさ。しかし、どうエセルレッドが動いてもいい様に、他のトリックも仕込んでいたけどな
アナラウドは、ふっと呟いた
ふん、いい気なもんだ。カデルの手柄と言うのは気に入らん
つづく
ありがとうございました!
※参考)時代背景について
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