英語の歴史が物語る!イギリスの言語が「フランス語から英語に変わった」2つの理由が興味深い
- 2016.05.04
- イギリスの歴史 英語、ウェールズ語の歴史

(18.7.16更新)
イギリスで話される言葉は当然英語!と思っていませんか?
確かにイギリスの公用語は英語ですが、イギリスには英語のほかに、ウェールズ語(ウェールズ)、スコットランド語(スコットランド)、アイルランド語(北アイルランド)があり、いずれも英語とは全く異なるケルト系の言語なのです。
また、イギリスで広く話されている英語は、北部ドイツから移住したアングロサクソン族が、イングランドで話していた言語が広がったものです。
イギリスの中世では英語が公用語として話されていましたが、英語が公用語でなかった時代もありました。
その理由は、英語の歴史、いやイギリスの歴史が深く影響しているのです。
✅ここまでの内容はこちらの記事も参考に!
>>英語のルーツは?ドイツ語、ラテン語、フランス語の影響について
✅各時代の英語の実際に発音などが知りたい場合はこちら
>>イギリス英語にはどんな歴史があるの? 中世の英語って理解できる?
英語ではなくフランス語に変わった中世のイギリス
まずは、英語の歴史を簡単に見てみよう! 5世紀ごろからイングランドにやってきたゲルマン系のアングロサクソン人が話す言語が、長年のうちに変化して英語になったんだ。
👉参考記事
それは1066年に、イングランドはフランスから攻めてきたノルマン人のギョーム2世に、一瞬のうちに征服されてしまったんだ。
ギョーム2世はウィリアム1世としてイングランド王になったんだよ。
※ノルマン人によるイングランドの征服(1066年)
イギリスの歴史を変えたノルマンコンクエスト(ノルマン征服)の再現
ウィリアム1世がフランスからやってきたノルマン人ということは、フランス語を母国語としていたんですか?
その通りだ。ウィリアム1世が戴冠した1066年以降、フランス語は上流階級の言葉で公式の場やイングランドの王室で使われるようになったんだよ。
ラテン語は教会などで使われ、英語は地位を失い農民の言葉となってしまったんだ。
イングランドで英語が再びカムバックした2つの理由
イングランドを征服したノルマン人は、フランス語にステータスと誇りを感じていたので、約300年くらいはイングランド王室や公式の場ではフランス語が話され続けたんだ。
しかし、14世紀には英語が公式な言語として、再びイングランド王室などで話されるようになったんだよ。
イングランド王室のノルマン人はフランス語に誇りを感じていたんですよね。なぜ、英語に戻ったんですか?
英語がイングランドの公用語に戻った理由は大きく2つ挙げられるんだ。
一つ目は、確かにイングランドで英語が公用語となり、公式の場ではフランス語が話されるようになったんだけど、50万人のイングランド人に対して1万人程度のノルマン人だったので、人口では劣勢だったんだ。
次第にノルマン人もイングランド人と混血が進んで同化を始め、彼らの話すフランス語もアングロ‐ノルマンと言ってイングランド訛りになっていったんだ。フランス語を話す誇りやステータスが薄れてきたんだよ。
黄色の部分が、イングランド(アンジュ―帝国)が12世紀に統治した領土。イングランドだけでなく、フランスにも広大な領土を持っていた。
二つ目は、このようにイングランドの支配階級のノルマン人貴族たちは、フランスとは異なるアングロ‐ノルマンとしての民族意識を持つようになり、本家フランス貴族との間にライバル心が芽生え始めたんだ。
当時のノルマン人たちはイングランドを統治するとともに、フランスにも領土を持っていたんだ。イギリス王ヘンリー2世(フランス語ではアンリ二世)の頃はアンジュー帝国と言って、多くのフランス領土をも統治する大帝国を築いていたんだ。
わああ、すごい広い領土ですね。でもフランスにはフランス王がいたんですよね?
次第にイングランド化するノルマン人とフランス王の間で対立が起こり、
いわゆるイングランドとフランスとの100年戦争が起こったんだ。
そうこうしているうちに、イングランドではフランス語を話すことが「フランスのイングランド侵略、イングランドの破壊につながる」と言われ初めるようになり、ノルマン人の英語化が進んでいったんだ。
そしてついにエドワード3世の1363年よりイングランドの公式の場で英語が使われるようになり、ヘンリー4世の1399年以降にイングランド王室でも英語を言語として用いるようになったんだよ。
※ヘンリー4世
イングランドでは最初は英語が話され、ノルマン人の侵略によってフランス語が公用語になったんだけど、ノルマン人がフランスと対立し、再び英語が公用語として話されるようになった、ということですね。
英語の歴史と、実際の歴史とのかかわりが、とても興味深いです。
イングランドでは英語も歴史なしでは語れず、ますます歴史に興味を持ちますね。
イングランドの英語に影響を及ぼしたフランス語
約300年ほどイングランドではフランス語が公用語として話されていたので、多くのフランス語が英語に取り入れられています。
例えばprince, duke, judge, court, tax, money などがあります。
アングロサクソンの英語(古英語)にノルマン人がもたらした英語(中英語)の違いが分かる例を挙げてみましょう。
・羊:古英語ではSheep、中英語ではMutton
・牛:古英語ではCow、 中英語ではBeef
・豚:古英語ではSwine、中英語ではPork
古英語では直接的な動物の名前が作られ、中英語では料理に使われる肉の名前になっている点が面白いですね。
その他にも、こんな英語がフランス語から取り入れられています。
・restaurant(レストラン)
・cruisine(料理)
・souvenir(お土産)
・religion(宗教)
・routine(ルーチン、慣習)
・divorce(離婚)
・rose(ローズ、ばら)
・genre(ジャンル)
こうやってみると、料理に関するものや、人間関係や花など、いかにもフランスらしいことばが英語に取り入れられていますし、日本語にも取り入れられていて、とても興味深いですね。
おまけ:当時の英語を聞いてみよう
英語のタイムスリップですね。やってみましょう!
興味深いのは、フランス語の影響を受けない、1066年前の英語は殆ど理解不能です(古英語と言います)。
しかし、その後フランス語を取り入れたりして行くうちに、だんだん分かるようになっていきます。(中英語~)
※もう少し英語の歴史を知りたい方は、この記事がおススメ
✅各時代の英語の実際に発音などが知りたい場合はこちら
>>イギリス英語にはどんな歴史があるの? 中世の英語って理解できる?
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