磁力の反転 ~中世に舞い降りたカムリ戦士たち 第4話~

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こんばんは。ウェールズの歴史を研究しているたなかあきらです。

ウェールズの9世紀~11世紀にかけてウェールズ王家が分裂して戦いを繰り広げる様子を、様々な登場人物の人間模様の物語をシリーズで描いています。

前回はギクシャクしていたウェールズ版の三本の矢が、強国とリベンジの戦いに勝利した場面でした。

 

前回第3話:

急流に変貌した結束 ~中世に舞い降りたカムリ戦士たち 第3話~

さて今回は、結ばれた結束が長続きするのでしょうか?
それとも、瞬時にバラバラになるのでしょうか?
強国が再び別の形で忍び寄ってきます。

ではお楽しみください。

 

<語り手>

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ウェールズの歴史にやたらと詳しいワタル。歴史になると話が止まらなくなる。

 

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歴史に詳しくないアサオ。心は優しいが、かなり小心者。

 

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語り手のジェイムス。親切で気の良いお兄さん。

 

これまでのあらすじ 

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 ※分割していたウェールズ。緑の部分は後にイングランドとなるウェセックスマーシア

 

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中世のウェールズは、主にグウィネズ(Gwynedd)、デハイバース(Deheubarth)、ポゥイス(Powys)の三国に分かれた内乱や、アングロサクソン族の国ウェセックスマーシア、さらにヴァイキングに攻められた苦しい時代でした。

9世紀にロドリ大王が登場しウェールズを統一して束の間の平和をもたらしましたが、マーシアに攻められ命を落としました。ロドリの3人の息子たちは結束を強められずギクシャクしていましたが、マーシアが再び攻めてきたときには協力し合い、父ロドリの仇を取りました。

 

<登場人物>

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長男:野心家でせっかちなアナラウド

 

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次男:手堅くしたたかなカデル

 

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三男:平和主義で弱気なメルヴァン

 

今回はこの2人がちょっと登場します。

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ウェセックス国、英雄アルフレッド大王

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マーシア国、エセルレッド

 

あらたな同盟国と反発 

 

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磁石の力、それがうまく働くと強くひきつけあい一体となり磁力も強くなる。しかし、反発方向に向くと、決して一体になることはなく、近づけると強く反発しあう。

人間の心もこれと似ている。思いが同じだと強くひきつけあい大きな力となる。しかし、思いが異なると敵対し始めると、近づけば近づくほど反発しあいその反発力も強くなる。アナラウドとカデル、メルヴァンの兄弟たち。一体化して強力な磁石となったが、再び引き合うことはあるのだろうか。

 

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ウェールズ、ルズラン城にて

  

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今回はマーシアの攻撃を防ぐことが出来たが、奴らは強国だ。奴らの侵略を防ぐにはどこかと同盟を結ばざるをえない。ヴァイキングの国、デーンローと結ぶことにする。

 

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アナラウド兄貴、俺は反対だ。他国と手を組むより、我らウェールズ同士がもっと終結した方がよいと思う。増してや、信頼ならぬヴァイキングだ。
どうせ結ぶなら、最も勢いのあるウェセックスと結ぶのがよいだろう。

 

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カデル、またお前は俺に盾をつく気か?毎度毎度、気に障るやつだ。今回はお前がどう言おうと、俺の考えで行く!

 

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アナラウドは単独でデーンローに向かい、ヴァイキングと同盟を結んだ。しかし、ヴァイキングは同盟をものともせず、アナラウドの領土であるウェールズ北部のグウィネズに攻め込んできた。

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うぬぬぬ、ヴァイキングの奴め、俺を裏切りまた略奪を始めてきやがった!!
くそっ、これではカデルの言った通りではないか・・・・
気に入らぬ、カデル今に見ておれ!

 

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西暦893年ごろ、アナラウドは苛立ちを隠せないまま、ウェセックス国のアルフレッド大王の元へと向かった。

 

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ルフレッド大王。ご存知と思いますが、我が国ウェールズはヴァイキングの裏切りに会い攻め込まれております。ヴァイキングを追い払うために、是非とも大王のお力添えを!

 

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これはこれは。ブリタニア3王のアナラウド殿、よくお越しくださった。喜んで貴殿に協力しよう。

ただし、条件がある。ヴァイキングを除く他国と同じように、ウェールズもこのアルフレッドに忠誠を誓うことが条件だ。

 

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(うぬぬぬ、仕方あるまい。カデルやメルヴァンに相談するのも癪だ。そうウェールズの統治者代表は俺だ。俺の決断で行く)

喜んでアルフレッド大王に忠誠を誓います。

 

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これは有難い、是非仲良くやっていこう。必要ならいつでも援軍を出すぞ。

 

アナラウドはアルフレッド大王と固く握手をした。

 

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(よし、これで同盟は成立だ。ヴァイキングを退けることができ、ウェールズも安泰となる。俺の権力も広がるに違いない、ははははは。)

 

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ところでだ、援軍はウェセックスからではなく、傘下のマーシアから出させよう。
貴殿も良くご存じの我が遠縁にあたるエセルレッドだ。

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うぐっ、エセルレッド、ですかっ!!

 

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ほおお、アナラウド殿。奇遇な所で出会ったわね。

 

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エ、エセルレッド!!!

 

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先般はとてもお世話になったわね、ありがと。貴殿との戦いに敗れたおかげで、我が軍はとんだ被害を被ったのよ。それが今度は我が軍が援軍に加わるとは奇遇ですこと。
しっかりと、戦ってあげますわよ。楽しみね、あははあはは。

 

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はっ、有難き幸せ。恩に着ます。

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ウェールズ、ルズラン城にて

 

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くくっそー、何たる屈辱感! それに俺はあの男かなり苦手だ!
カデルの奴め、最初から俺に恥をかかせるためにウェセックスとの同盟を勧めたのか!
待てよ、まさか・・・
奴がヴァイキングをそそのかして俺の領土に攻撃させ、ウェセックスとの同盟をするように仕向けたのか!

許せん!カデルの奴、国逆として成敗してやる!

 

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ルヴァン、メルヴァンはおらぬか!

 

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は、はい、アナラウド兄様。どうされました。

 

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カデルを即刻、攻めよ! デハイバースを攻めカデルの首をはねてこい!

 

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カデル兄さんが何をしたんですか?

 

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お前エセルレッドとあったことはあるか?ブルブルブル。
そんなことどうでもいい、奴は反逆者だ! 

 

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カデル兄さんは何も悪いことしてないじゃないですか? 真相を確かめたのですか?

 

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問答無用!お前に何が分かる?メルヴァン、ごちゃごちゃ言わず、ウェールズ統治者に従え!逃げるなよ。

良いか、お前が戦いに出ている間、お前の息子は俺が預かっておくことにしよう。
必ずカデルの首を持ち帰ってこい。それまでは戻ってくるな、失敗も許されぬぞ。

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(アナラウド兄様は何も知らない・・・)

 

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ふふ、メルヴァンが勝てば、カデルの領土デハイバースは俺のものだ。メルヴァンが負けても、メルヴァンの敵討ちと反逆者の成敗の2つの大義をもってカデルを討てるぞ。

 

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せっかく、結束ができたと思ったのに・・・
今回の話でまた台無し、というかもっと悪くなってしまったじゃないですか。

 

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こりゃ、もうどうしようもないな。アナラウドが暴走し始めてきた。

 

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この人、何とかなんないの? カデルが立ち上がるとか。

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まあ、行く末を見守ろう。

 

最後に:たなかあきらコメント

 

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という訳で、次回の行く末を見守りましょう。

 

アナラウドは何はともあれ、正式にウェールズウェセックス(後のイングランド)が同盟を結んだ初めての王です。そういう意味では、重要な役割は果たしていました。

それと、今回登場したウェセックスのアルフレッド大王は、ウェセックスをはじめとするアングロサクソンの国々を、ヴァイキングの侵略から守った偉大な英雄としてとても有名な王で、今も語り継がれています。

 

※歴史上の出来事や人物が登場しておりますが、フィクションでたなかあきらのオリジナルストーリーです。

第一話:
3本の矢はここにも存在した~中世に舞い降りたカムリ戦士たち 第1話~ 

第二話:

絡み合わない結束 ~中世に舞い降りたカムリ戦士たち 第2話~ 

第三話:

急流に変貌した結束 ~中世に舞い降りたカムリ戦士たち 第3話~ 

 

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※これら記事の著作権はたなかあきらに属します。

 

最後まで読んでくださり有難うございました。

コメント

  1. nezuzyouzi より:

    アナラウドが暴走し始めてきましたね。
    三本の矢は、バラバラになってしまうのでしょうか。
    たなかあきらさん、続きが楽しみです。^^

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