こんにちは、たなかかあきらです。
ワインは中世ヨーロッパでも広く飲まれ、最も高級だけでなく健康的な飲みものとされていました。
また、冷たく水分の多い水などやビールと異なり、適度なワインを飲むと(特に赤ワイン)、代謝を助け、良い血液を作り、気分的にも明るくなるとされていました。
中世のヨーロッパではどんなワインが飲まれていたのでしょうか?
中世イングランドのワイン事情
ブリテン島を含め北ヨーロッパで作られていたワインは、白ワインが中心でした。
12世紀の間、大陸から海を渡って輸入されたワインは、軽く、酸味がある白ワインで、ワインを飲む人々の選択肢は白ワインでした。
イングランド国王のヘンリー二世は、フランスのルーアン自治都市の市民に、イングランドにワインを輸出する独占権を与えました。
※ヘンリー2世の時代、多くのフランス領土はイングランドが統治していた
👉ヘンリー2世の参考記事:
名作映画「冬のライオン」とヘンリー2世 イングランド王室の歴史背景
13世紀になってルーアンがフランスの手に落ちた時、ワインの輸出地は数十年間ラ・ロシェルの港に変わりました。
当時、イングランド市場で売られたポワトヴァン・ワインは、酸味のある白ワインに似ていました。
1224年に、今度はラ・ロシェルがフランスに奪われた時、イングランドは他のワインの地を探さねばならなりませんでした。
幸運にもボルドーはまだイングランドの統治下にあり、次の二百年はイングランドとフランス間のワイン取引の中心となりました。
ボルドー地方のワインは赤ワインでした。このため、白ワイン中心であったワインは赤ワインへと変わっていきました。
しかし、現在我々が飲んでいるような、濃い赤色ではありませんでした。
中世終わり頃のイングランドのワインはvin ordinaireと呼ばれ、現在のロゼに似た色でした。
現在のclaret(ボルドー地方産の赤ワイン)のもととなるclairetと呼ばれるワインがあり、ピンク色をしていました。
clarryと呼ばれるワインがありましたが、claretとは関係がなく、スパイスワインで、はちみつて甘くし、ジンジャー、サフラン、コショウが加えられました。
ワインの作り方
現在のつくり方
参考:ワインができるまで | マンズワイン
中世の白ワイン
白ワイン用のブドウはバスケットに摘まれ、大きな樽の中に入れられる。そして、作業員に踏み潰されたり、木製の板で潰されて、最初のジュースはワインを作るために集められる。
残った搾りかすはプレスされて、さらに液体が抽出される。これは樽の中に入れられ、数日中に発酵が起きる。
樽は発酵のための倉庫に入れられ、発酵のプロセスが上手くいくかポイントとなる、温度は運任せであった。
寒すぎると発酵せず、暑すぎると発酵のプロセスが止まってしまった。
発酵が活発になり過ぎると、樽が破裂したりもした。ライン地方のワインを生産するドイツ人たちは、発酵を促進させるため、樽の倉庫を暖めたりした。
中世の赤ワイン
赤ワインを作る場合、発酵は白ワインよりも長い時間がかかりました。時々、発酵プロセスの前に、茎はブドウから取り除かれ、タンニンの含有量を減らし飲めるようになるまでの時間を短くしました。
赤ワインのブドウは急速に発酵するので、こぼれないように樽の縁まで一杯にする必要はない。またぶどうを踏み潰す人は、二酸化炭素中毒にならないように樽のベルト部分よりも頭を上げていました。
一度、発酵が始まると、たいていの場合、数時間のうちに樽は板でふたをしました。 発酵の真っ最中、皮、種、かすは浮いてくるので、すくい取ってワインプレスで圧搾されました。圧搾は3回行われ、回数を経るとともに苦くなりました。
発酵が長ければ、より濃い色のワインになる。 イングランド市場に出ていたpink roséやvin clairet は、1日で飲めるようになりました。
全てのジュースが、潰したブドウから搾り取られると、残りカスは水と混ぜられ発酵の為に3日間放置された。これは、アルコール度数約2%のほとんど色の無い飲み物で、
piquette ピケット酒やbuvandeと呼ばれました。
安く貧しい人やのどが渇いた労働者が飲みました。最後になったカスは、藁と混ぜて畑に廃棄されました。
ワインの品質は、醸造年や地域、ぶどうの種類や何度目の圧搾を使うかによって大きく変わります。最初に圧搾したぶどうは、純度が高く洗練されていて、上流階級向けの最も高いワインとなりました。
2度目、3度目に圧搾したぶどうは、品質が落ちていき、一般の人々は2~3度目に圧搾した赤ワインを飲みました。さらに最も貧乏な人々は、水割りのお酢が唯一の選択肢でした。
高い品質のワインを熟成させるには、専門的な知識と高額な貯蔵庫と装置が必要で、さらにワインの値段は高くなりました。
ワインの品質を復活させる方法
中世ヨーロッパの多くの文書から判断すると、傷む兆候のあるワインを回復させるには、保管方法が問題でした。
お酢は一般的な材料成分であるが、ワインに使われるのはわずかでした。
14世紀の料理本ル・ビアンディエには、ワインを生き返らせる方法が書かれています。
当時は化学的なプロセスは分かっていませんでしたが、ワイン樽はいつも一杯にしておく、乾燥させて茹でたぶどうの種と、乾燥させて焼いた白ワインの搾りかすの灰を混ぜたものを加えると、殺菌効果が高かったそうです。
スパイスワイン
砂糖や香料を入れて温めたワインは、裕福な人々に人気があっただけでなく、とても健康的な飲み物だと医者も考えられていました。
ワインには、潤いを与える加湿器のようにはたらいたり、食材の栄養素を全身に行き渡らせる導管の役割があり、香料やスパイスを加えるとより健康に良い、と信じられていたのです。
スパイスが加えられたワインは通常、赤ワインに、ジンジャー、カルダモン、ペッパー、グレインズ・オブ・パラダイス、ナツメグ、クローブ、砂糖を組み合わせました。
中世ヨーロッパでは、お金持ちは(当時とても高かった)スパイスをワインを入れていました、そして貧乏な人は、その地方のフルーツを入れていました。
これらのスパイスは小さな袋の中に入れてワインに浸したり、見せかけのワイン(hypocras)やスパイスワインを作った。
14世紀まで、小袋に入ったスパイスは、すぐ使える既製品として、スパイス商人から買うことができました。
※グレインズ・オブ・パラダイス
アフリカ・ガーナ産のショウガ科香辛料:スープやシチューに入れるスパイスとして親しまれると同時に、咳、気管支炎、消化不良、リウマチなどの生薬としても使用されています。
※Hypocras の名前は hypocrite (偽善の、見せかけの)な vin (ワイン)と言う意味で、はあまり保存状態の良くないワインに、様々なスパイスやはちみつを入れて作りました。
※スパイスを入れ温めたワインの動画
参考文献:
The History Girls: WHEN CLARET WAS PINK: Wine production in the Middle Ages by Elizabeth Chadwick
Oldcook : hippocras, medieval spiced wine, ypocras, ipocras, hipocras
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