前回はイギリスやウェールズがローマ帝国に支配されていた、ローマ時代について説明しました。今回第3回は、下記の大まかなウェールズの流れの中で、ローマ軍が去った後のブリトン人が統治した時代についてご紹介いたします。
※第1回ウェールズの歴史概要
※第2回、ローマ時代
今回もこの2人にウェールズの歴史を楽しく話し合ってもらいます。
ワタル課長
部下のアサオ
ローマが去ったブリタニア、しかし多くの外敵に攻撃された時代
ブリトン人が統治したブリタニア時代ってどんな時代だったのですか?
簡潔に説明しよう!
※ブリタニア時代は4世紀前半~7世紀前半までの事を指すことにしています。
この時代の前半はさっきの説明の通り、ローマ軍が撤退しウェールズ人の祖先であるブリトン人が、ウェールズを含むグレートブリテン島全域の自治を回復したけど、北や西からの外敵の攻撃に苦しんだんだ。そんな中、ウェールズでは現在のウェールズの原形となる国が設立され勢力を拡大した時代だったんだ。
しかし、後半になるとドイツから侵略してきたアングロ・サクソン族の諸国にグレートブリテン島は占領されていき、ウェールズもアングロサクソン諸国の攻撃を受け始めた時代でした。
ブリタニアで1人の王が移住してウェールズを創った!
最初にいったウェールズの原形とはどんな国ですか?
そう、ちょっと詳しく話をしよう。ウェールズ付近には幾つかの部族が住んでおり当時は南部ブリタニア司令官が全体を支配していたんだ。しかしアイルランドから攻めてくるスコット族の攻撃に手を焼いていたんだ。
一方、現在のスコットランド地方の首長であったキネダ・アプ・エダンは、外敵ピクト族やバイキングの攻撃から守りながら勢力を広げ、北部ブリタニア司令官の地位を奪い取ったんだ。キネダはその武力を高く買われ、ウェールズに攻めてくるスコット族の侵略を防いで欲しいと、南部ブリタニア司令官ヴォルティゲルンから要請を受けたんだ。
キネダさんは要請を受けたのですか?
そう!キネダは大きな決断をしたようだ。スコットランドの地を離れ8人の子供と1人の孫を連れてウェールズ北部に移住し、スコット族と戦い追い払う事に成功したと歴史書にはかかれているんだ。そして、移住したウェールズ北部に国を建国し、勢力を伸ばして行ったんだ。
ええ、ええ
キネダはウェールズに作った国を分割し9人に領土を分け与え、それぞれの領土は伝説によると9人の名前に因んだ国名となっているんだよ。その中でグウィネズ国が最も大きな支配力を持ち、その王の血筋がウェールズ王室を作っていったんだよ。
ウェールズ王室というと・・・エリザベス女王の祖先になるのですか?
おっ、覚えていた様だね。このウェールズ王室の血筋からは多くの偉大なウェールズ王が生まれたり更に子孫はヘンリー8世やエリザベス1世などイングランド王となったり、
うまくたどっていくと今のイギリス王室までつながるぞ!
本当ですか?キネダさんはすごい人物なんですね。開祖みたいな感じですね。
そのとおり!伝説が多くて謎が多く良く分かっていない人物なのさ。そこを調べるのが面白いんだけどね。
さすがワタル課長~博士のようですね。
褒めても何も出ないよ。
アングロサクソンに追いやられたブリトン人!
さきほど説明したグウィネズという国がウェールズを中心に勢力を伸ばしていき
グウィネズ王であるマエルグウィン、カドヴァン、カドワロン、カドワラドルらがブリタニア王としてもイギリス全体に影響力を及ぼしたんだ。
んんん、マエっ・・・発音しにくい名前ですね・・・
全部ウェールズ語で独特な名前だからなあ。
※ウェールズの名前についてはこの記事をご覧ください。
しかし、徐々にアングロ・サクソン諸国の勢力が拡大して、ブリトン人は西のウェールズや北のスコットランドに追いやられブリタニアの呼び名もこの時期で終わりとなり、カドワラドルが最後のブリタニア王となるんだ。
そのアングロ・サクソンはなんでイギリスにやってきたんですか?
ちょっと話は戻るな。南部ブリタニア司令官であったヴォルティゲルンは外敵の攻撃を防ぐためにキネダを呼んだだけでなく、ドイツに住んでいたアングロ・サクソン族を傭兵として雇ったんだ。つまり自分の国だけでは兵力不足で、他に外注したんだよ。
なるほど~契約社員みたいな感じですね。
そう、その契約社員たちはピクト族やスコット族などの外敵をやっつけていたんだけど、それより雇い主を攻めて領土を奪っていった方が美味しいビジネスだって気がついたんだ。
ブリタニア軍はわーっと集まり、わーっと戦う組織化されていない軍で、きちんと訓練され組織化されたアングロ・サクソン軍には手も足も出ず、どんどん領土を奪われていったんだよ。
あら、、、、猫がネズミに噛まれてしまったのですね。それにしてもブリタニア軍は弱かったんですね~
中にはアーサー王など力強い王もいたんだけどね。アングロ・サクソンのますます増えていく圧力には勝てなかったんだなあ。
おまけ:ちょっとだけアングロサクソンを撃破した男
そんな中、アングロ・サクソン軍を破った1人のウェールズ王の話をしておこう。
7世紀のウェールズはカドヴァンやカドワロンという王がいて、ブリタニア王としても支配力を持っていました。アングロ・サクソン族はアングロ・サクソン七国と呼ばれる国々を作り続々と勢力を伸ばしていました。
アングロ・サクソンの国々の間でも戦争は起こり、北部のノーザンブリア国の王子であったエドウィンは幼児の頃、他のアングロ・サクソン国に攻められ国を脱出してウェールズにたどり着きました。
可哀そうに思ったウェールズ王はエドウィンを引き取り、カドヴァン王や息子カドワロンと一緒に住んで育てられました。
エドウィンはカドヴァンと仲は良かったのですがカドワロンとはそりが合わず、お互いライバル心が芽生えてきました。成長したエドウィンは自分の国に戻りアングロサクソン諸国に打ち勝ちノーザンブリア国を立て直しました。そして矛先はカドワロンに向けられました。ここから二人のライバルの戦いが始まりました。
カドワロンがウェールズ王になると、エドウィンはウェールズに攻め入りカドワロンを国外に追放しました。負けちゃいられないとカドワロンはフランスで軍を集めウェールズに舞い戻ってきました。さらにカドワロンは他のアングロ・サクソン国の軍も得て、エドウィンと激しい戦いを繰り広げウェールズを取り戻します。
カドワロンやりましたね~マンガにすると面白そうな話ですね~
今回のまとめ:ブリタニア時代
グレートブリテン島はローマ軍支配、ピクト族&スコット族の侵略、アングロ・サクソン族の侵略支配と、絶えず外敵にさらされる環境でした。その中で国を作り生き延びてきたウェールズ、そこにはウェールズ人としての強いアイデンティティーがあったと思います。次回はアイデンティティーを持ったウェールズ人同士の内乱が起きた戦乱の時代をお話しします。
<追伸>
しかし、カドワロンはエドウィンを破っても進軍を止めず暴君化しノーザンブリアの人々が恐れるほど、残忍・残虐にアングロサクソンの国々を荒らしていきました。
アングロ・サクソン軍は必死になってカドワロンを止めようと総力あげ、ついにカドワロンは敗れる結末となりました。どの時代でも度が過ぎた行為は落ち目になっていきますね。
最後まで読んでくださいらりがとうございました。
<キャスト>
ワタル課長
部下のアサオ
部下の先輩ジェイムズ
- 作者: たなかあきら
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