イギリス・ウェールズの歴史ーカムログ

ウェールズ語ではウェールズの事をカムリ(仲間)と言います。ウェールズの歴史と、ウェールズとの関わりが深いアーサー王についてのページです

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イギリスの歴史に絶大な傷跡を残したH兄弟 「出稼ぎ勇者」第三話

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こんばんは。ウェールズ歴史研究家、たなかあきらです。
今回の「出稼ぎ勇者」の主人公は、このヒンギストとホルサ兄弟です。ヒンギストとホルサは、やがてイギリスの歴史を根底からひっくり返し、良くも悪くも歴史に名を刻むのです。

 

食えない傭兵だった男たち 

 

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昔々のことでした。
現在のドイツのある所に、ヒンギストとホルサという兄弟がいました。
兄弟は戦士でした。しかし、主君はいませんでした。
彼らはそう、雇われ傭兵として各地に赴き、戦利品や報酬を得ていました。


「兄貴、最近はサッパリだなあ。良い仕事はないだろうか?」
「俺たちには無敵の武力があるだろう。何とかなるさ。いざとなれば、その辺から奪えば良いだろう」

 

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ヒンギストとホルサ兄弟は、腕はよいが素行は荒く、騙し裏切り略奪何でも平気でやってのけました。
次第に、ヒンギストとホルサには傭兵の仕事が来なくなっていきました。

「兄貴、暇だなあ〜金もないし、食いものもないし、戦いもない」
「うむ。あるのは暇だけだ。ああ、思いっきり暴れたいなあ」

 

傭兵を探していた男

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一方、ブリタニアでは暗黒王ヴォルティゲルンが苦闘していました。
敵から攻められて、兵力にも限界が来ていました。

「ぅぁぁああ、また敵が攻めて来よる。ローマ帝国に援軍を要請したが、断りやがった。腐った野郎どもだ」 
「ぅぁぁああ、何ともならん。おい、何とかならんのか?」 


「へへっ、傭兵を雇ってはいかがでしょうか、ヴォルティゲルン様」
「この前、北の国の何とやらを傭兵に雇ったばかりではないか。そう、そのキネダとか言う傭兵はまだ着かぬのか?」
「まだ着きませぬ。なにせ、キネダですから」   
「・・・・」

「失礼。冗談はさて置きまして、素行に難はありますが、腕っぷしの効く兄弟に心当たりがございます。雇うには結構高いようですが」
「金は幾らでも払う。その兄弟とやらを直ぐに連れて参れ」

 

仕事が見つかったぞ!!

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この依頼はすぐさま、暇を持て余していたヒンギストとホルサに届きました。


「弟よ、仕事だ」
「本当っすか。それで、何処ですか?」
ブリタニアの南部だ。ヴォルティゲルンというバカ王子が、たんまりと報酬をくれるそうだ」
「暖かで良さそうですね。ふふふ、滅多にないチャンス。ここはしこたま、稼ぎまくりましょう。ふふふ」

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今回の「出稼ぎ勇者」は、いえ、出稼ぎ勇者とは言えないかもしれません。しかし、歴史は確実に彼らによって変わるのです。こうして出稼ぎにブリタニアに向かったのでした。

ヒンギストとホルサの戦いぶりは、前評判通りでした。
次々と敵のスコット族やピクト族を倒していきました。

「さすがはヒンギストとホルサ兄弟。見ていて頼もしいわ。もうじきで、敵を一掃できるな。ほほほ、報酬もたっぷり出さねばな」


仕事を生み出す方法

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「何とも手応えのない戦いだ。あっと言う間に片付いてしまったわ」
「このままでは、仕事が終わってしまうぞ。国へ帰ったらまた、プータローだ」
「ヴォルティゲルンから搾取できる手を何とか考えねば」

 

★第1ステージ、プレゼント作戦

ヴォルティゲルン殿、こちらが我が国の特産物です。お召し上がりください
「おお、済まぬな。なかなか、旨いではないか」
「こちらが我が国の洋服です」
「おお、素晴らしい。どうだ似合うか?」
「こちらが我が国のワインでございます」
「ううむ。美味美味。ブリタニアとはうまみが違う」

 

★第2ステージ、くれくれ作戦

ヴォルティゲルン殿、住む家が欲しいのですが」
「お安い御用だ」 
「ケントに住みたいのですが」
「わかった」
「作物を育てる土地が欲しいです」
「ん〜考えておこう」

ヒンギストとホルサの奴、十分に報酬を与えているのに、更に要求をして来やがる。とっとと国へ帰って貰いたいものだ」


★第3ステージ、略奪作戦


「弟よ、そろそろ仕上げに行くか」
「ラジャー!」

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これから起きることが、長剣の夜(the Night of the Long Knives)と言う事件です
ヒンギストとホルサ兄弟、ヴォルティゲルンの立場が一転してしまうのです。

 

「ヴォルティゲルン様、さっ、もっと飲んでくださいよ」
「結構よっぱらった。オレはこれ以上は飲めぬ」

 

「そんなこと言わずに、ヴォルティちゃん。もっと、お飲みにな・っ・て」
「おっ、、そうかぁ。じゃ、飲んじゃおうかな」
「きゃー、す・て・き」
「オネーチャン、とってもかわいいね。好きになっちゃおうかな~」

 

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今だ!とばかりに、ヒンギスととホルサ兄弟と手下たちは、長剣を手にヴォルティゲルンの部下たちをやっつけ、ヴォルティゲルンを取り囲みました。

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「ヴォルティゲルン様。ケントの地を我々にくださいませんかねえ」
「ひっく、なんでお前らのような奴に、ケントを。ヒック」
「首が飛んでもいいのですかぁ? ただとは言いませんよ。ヴォルティゲルン様は我が娘ロンウェンをお渡ししても良いのですがね」

「ヴォルティちゃん! どおぉ」
「ん、そうかそうか。そんなら、何でもあげちゃう」

 

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こうして、グレートブリテン島の東部にあるケントはヒンギストとホルサ兄弟の領土となったのでありました。 


 

★第3ステージ、ドヤドヤ作戦

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「よし、よし、上手くいった。領土確保、第3ステージ完了」
「では次のステージ、ドヤドヤ作戦」

「ヴォルティゲルン殿、土地を貰ったので耕す人夫が必要だ。友人を何人か呼ぶが、異論はないだろうな」
「まあ、多少なら良いですよ」

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ヒンギストとホルサ兄弟は本国から、ジュート族の仲間を呼びました。
ジュート族は何度もやって来るようになり、ドンドン移住しました。

ジュート族と同じゲルマン系民族の、アングル族もゾクゾクと来るようになりました。さらには、サクソン族も続きました。

いわゆるアングロサクソン族が、自分たちの国よりずっと暖かなブリタニアに、ドヤドヤとやって来るようになりました。
大勢アングロサクソン族達は移住しました。彼らは仕事をしなければ食っては行けません。

 

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「兄貴、なんの仕事をしようか?食料も減るし・・・」
「ケントだけでは狭いなあ。もっと領土を拡げて、食い扶持を増やさねばならぬ」
「そうすね」
 

 

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ヒンギストとホルサのもと、アングロサクソン族はブリタニアを攻撃し、領土を広げていきました。

 

「出稼ぎ成功!!」

 

 

最後に

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ヒンギストとホルサ兄弟が作戦を開始した5世紀中旬から、数世紀に渡りアングロサクソン族は領土を拡大し続け、7世紀にはほぼ現在のイギリス内の各国の国境まで勢力を増しました。


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450年ごろのブリタニアアングロサクソン族の痕跡はほとんど見られない。

 

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600年ごろ。緑色の部分がアングロサクソンの領土となる。

 

こうして、アングロサクソン族はイングランドを形成したのです。
イングランドのスタートとなるきっかけが、ゲルマンの国からやってきたヒンギストとホルサ兄弟の「出稼ぎ」にあったと言っても過言ではないでしょう。

 

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