
こんばんは。ウェールズの歴史研究家たなかあきらです。
ウェールズの9世紀~
前回はせっかく結束が強くなったウェールズ3王が、再び決裂して戦いが起きる内容でした。
前回第4話:
その戦いはどうなるのか? 3人の兄弟にはどんな結末が待っているのか?
ではお楽しみください。
これまでのあらすじ

※分割していたウェールズ。緑の部分は後にイングランドとなるウェセックスやマーシア。

中世のウェールズは、主にグウィネズ(Gwynedd)、
9世紀にロドリ大王がウェールズを統一して束の間の平和をもたらしましたが、マーシアに攻められ命を落としました。
再びマーシアが攻めてきた時に、関係がぎくしゃくしていたロドリの3人の息子たちは初めて協力し合い、マーシアを打ち破ります。しかし、その後は再び対立するようになりました。
<登場人物>


長男:野心家でせっかちなアナラウド

次男:手堅くしたたかなカデル

三男:平和主義で弱気なメルヴァン

マーシア国、エセルレッド
再び始まった内乱

(アナラウド兄様は何も知らない・・・)

ふふ、メルヴァンが勝てば、カデルの領土デハイバースは俺のものだ。
メルヴァンが負けても、メルヴァンの敵討ちと反逆者の成敗の2つの大義をもってカデルを討てる。

メルヴァンは自軍を率いて出発し、カデルの領土へ攻め込んでいった。


カデル兄さん、僕に斬られてください!

メルヴァンよ、なぜ俺を攻める?アナラウド兄貴に脅されたか。

兄さん、問答無用! 覚悟!

ならば残念だが仕方あるまい。


うぐぐっ、ぐはっ

メルヴァンよ許せ!

ぐはっ、、、。僕はアナラウド兄様に脅されていたんだ。
カデル兄さんを討たなければ、僕の国ポウィスは攻撃され、息子も殺されてしまう。
本当はカデル兄さんの力になりたかった。ぐはっ、アナラウド兄様とカデル兄さんと平和な国を作りたかった、ぐぅぅ。

メルヴァン、よくわかった。もう話すな。

ヴァイキングにアナラウド兄様の領土を襲わせたのは、、、襲わせたのは、、、この僕。でもアナラウド兄様を止めれなかった・・・・兄さん・・・ごめんよ・・・
がくっ、

メルヴァン!
ああ、メルヴァン。なんてことだ。なんてことになってしまったんだ。
メルヴァン、お前の気持ち、お前の無念の気持ち、心に秘めて生きていこう。
きっと将来、再び平和なウェールズを作っていこう。お前の国、ポウィスも俺が守る。

北ウェールズ、ルズラン城にて


なに、メルヴァンがカデルに討たれただと!ポウィスも占領された?
許せん! (よし好都合だ!) カデルの奴、全力で成敗してやるわ!!

その頃、マーシアの大軍がウェールズに向かって進軍を始めていた。

ほおお、待ってましたのよ!
ウェールズの動乱を見て、過去の仕返しをするため同盟を破って攻めてきたのか、それとも、アナラウドと結んだ同盟を守って援軍を送り込んできたのか、真相は分からない。

さあ、誰でもかかっていらっしぁい! 可愛がってあげるわよ!
895年、エセルレッド率いるマーシア軍は、カデルの国デハイバースを攻めて略奪、虐殺、放火行為を繰り返した。カデル率いるデハイバース軍は果敢に立ち向かったが敗れ去り、デハイバースは荒廃した。

ああ、デハイバースが・・・・・・我が国が・・・・

ざまあみろ、カデル。お前の思うようには世の中は動かんさ。
これからはアナラウドの世の中だ。俺に歯向かうやつは何人たりも許しはしないぞ!
マーシア軍のバックを武器に、アナラウドはウェールズ内の勢力を広げ、権力を我が物にした。気に入らないものは排除しやりたい放題の独裁を続け、暴君アナラウドと人は呼ぶようになった。

カデルは姿を隠し、アナラウドに再び意見することもなかったという。
こうして、父ロドリ大王の思いとは全く異なる歴史が刻まれ、皮肉にもウェールズの内乱は収まり、ヴァイキングの略奪行為はしばしばあったものの、約20年間は際立った戦争もない時代が続いた。
しかし、カデルは全てを諦めていたわけではなかった。

息子よ、ハウェルよ。今の世の中な、ウェールズ始まって以来のひどい世の中だ。
このアナラウド独裁の世はこのまま続けてはならぬ。しかし、今は動く時ではない。
やがてアナラウドにも寿命が尽きる日が来るだろう。
その時にお前が立ち上がり再びウェールズを統一し平和な時代にしてくれ。そのためにしっかり学び実力を蓄えてくれ。
ワシはアルフレッド大王がいるイングランドに行ったことがある。
法律がきちんと整備され、独裁ではなく政治の仕組みがきちんとできていた素晴らしい国であった。
今のウェールズはどうか? なんの決まりもなく自分たちの首を絞めあう野蛮な国だ。
ハウェルよ、お前はそんな平和で進化したウェールズを作ってくれ。
「はい、父上。しっかり勉強してウェールズを良い国にします!」
このハウェルと呼ばれた青年、この動乱のウェールズの中で次に立ち上がっていく人物になるのである。
もちろん、独裁者アナラウドにも権力を引き続き持った息子がいた。
独裁政治のこの先、争い合った二人の息子たちの関係、どうなるのかウェールズ。

最後に:たなかあきらコメント

第5話まで読んでくださり有難うございます。
ご期待に反して、アナラウド(本名:Anarawd ap Rhodri、不明~916年没)の一人勝ちとなってしまった結末でした。
本当の歴史でもアナラウドが暴君化していたようです。しかし、カデルは黙っていたわけではなく、地道に復活の道を歩んでいたのです。
その思いは息子ハウェルに引き継がれ、、、というのが次回からのストーリーです。
※歴史上の出来事や人物が登場しておりますが、フィクションでたなかあきらのオリジナルストーリーです。
第一話:
3本の矢はここにも存在した~中世に舞い降りたカムリ戦士たち 第1話~
第二話:
絡み合わない結束 ~中世に舞い降りたカムリ戦士たち 第2話~
第三話:
急流に変貌した結束 ~中世に舞い降りたカムリ戦士たち 第3話~
第四話:
磁力の反転 ~中世に舞い降りたカムリ戦士たち 第4話~
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最後まで読んでくださり有難うございました。
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