(18.7.25更新)
ヨーロッパ中を荒しまわった海賊のヴァイキング。特にヴィンランド・サガの舞台となっている、11世紀初めのイングランドではデーンローと呼ばれる地域を占領しイングランドを征服する勢いでした。
※黄色い部分がヴァイキングが奪ったデーンロー
ヴィンランド・サガでも度々登場するウェールズも、長い間ヴァイキングの侵略に苦しみ数々の戦いを続けていました。しかし、ウェールズはイングランドと異なり、ヴァイキングに支配されるほど領土を奪われたことはありませんでした。
なぜ、ウェールズはヴァイキングの支配からまぬがれたのか?その理由についてお話いたします。
ヴィンランド・サガの舞台になったウェールズはどこ?
ヴィンランド・サガを読んでいるとモーガンクーグとよばれる場所が出てきますが、そこはどこなんですか?
ウェールズは四国位の面積で、中世では幾つかの小国に分かれていたんだ。その中で、モルガンウィグ(Morgannwg)という王国があったんだ。グウェント(Gwent)とグウィリシング(Glywysing)の二国が、ヴィンランド・サガの時代より少し前に統合してできた国なんだ。
南部ウェールズというと、確かチェプストウ城がありましたね。
そう、チェプストウ城から、セヴァーン川が流れ込むブリストル海峡が見えるんだ。いい眺めだぞ~またモルガンウィグはアーサー王が戴冠式を開いたとされるカエルレオンがあり、アーサー王伝説もたくさん残っているんだよ。
だからヴィンランド・サガにも、アルトリウス(アーサーのローマ的な呼び方)がよく伝説として登場しているんですね。そういえばヴァイキングの一行がウェールズを通り抜けるシーンがあったけど、ウェールズとヴァイキングは戦わなかったのですか?
※ウェールズを通り抜けるアシェラッド兵団
ウェールズにもヴァイキングは何度も侵入してきて、両者はしょっちゅう戦いを続けていたんだよ。しかし、ウェールズはヴァイキングに領土を広く奪われることがなかったんだ。その理由は・・・
ヴァイキングの侵略から免れたウェールズの3つの特徴
ウェールズがヴィンランド・サガの時代、ヴァイキングに征服されなかった3つの理由があると思うんだ。説明しよう!
①ロドリ大王
ヴィンランド・サガの時代から2世紀ほど遡った9世紀のウェールズは、デーンローからやって来るヴァイキングの攻撃を頻繁に受け不安な生活が続いていました。当時のヴァイキングの王はデンマーク王ゴールム(Gorm)で強大な勢力を誇っていたんだ。
ゴールムはヴィンランド・サガに出てくる、スヴェン王の祖父に当たる人物さ。そのゴールムは執拗にウェールズに攻め込み略奪を繰り返したんだ。
※ゴールム王、ウィキペディアより
そこに立ちはだかったのがウェールズ王、ロドリ・ザ・グレート(ロドリ大王)だ。ロドリ大王は、ヴァイキング軍をことごとく破り856年の戦いでは大勝利しゴールムは戦死したんだ。それでもヴァイキングはウェールズへの侵略をやめなかったんだけど、その度にロドリ大王はヴァイキングを撃破しとうとう壊滅させたんだ。
ロドリ大王は強かったんですね~。
勝てないウェールズに攻めるよりも、イングランドを攻めた方が得とヴァイキングは考えたんだろうね。
※ロドリ大王に関する記事
②夜討ち・奇襲
ウェールズがヴァイキングを防ぐことが出来た理由は、ウェールズの戦いにあったんじゃないかと思うな。
ウェールズの戦い方としては
・夜討ち、奇襲を得意として、いつどこから攻めてくるか分からない
・ロングボウの名手が多く近づけない(フランス百年戦争でも大活躍)
・山岳地帯の地形を利用し形勢を有利に持っていく
このため、海に強いヴァイキングは戦いにくかったのではと考えられますね。このためアングロサクソンもウェールズを征服することはできなかったと思うな。
③共通の敵、イングランド
ウェールズはアングロサクソンのイングランド、特にマーシアとの戦いに手を焼いていたんだ。デーンローをつくったヴァイキングも隣国はマーシアで戦いを続け、ヴァイキングとウェールズにとって共通の敵はマーシアであったんだ。
そこで、ウェールズはヴァイキングと戦争はする一方で共通の敵と戦う際には、ヴァイキングから援軍を受けたりしていたんだ。
特にアイルランドとウェールズは良好な関係があり、アイルランドのヴァイキングには
幾度も助け合った歴史があるんだよ。
実はウェールズはヴァイキングに後で征服された
ヴァイキングに支配されなかったウェールズはとても強かったんですね。
ところが、最終的にはそうではないんだ。フランスに移住したノルマン人のヴァイキングが1066年にイングランドを征服し、その後ウェールズもノルマン人の侵略をうけることになるんだ。そして、ついに1283年にはノルマン人のイングランドに征服されてしまうんだよ。
最後に
ヴァイキングがウェールズを支配できなかった理由、いかがでしたでしょうか。
ヴィンランド・サガには多くのウェールズに関連する場所や人物が登場します。
こちらの記事もお楽しみください
ヴィンランド・サガに関する記事一覧
最後まで読んでくださり有難うございました。
- 作者: 幸村誠
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2012/09/28
- メディア: Kindle版
- この商品を含むブログを見る
コメント